最初の老眼鏡が作れなかった訳とは 2/2

  • 2016.10.21 Friday
  • 12:11

眼鏡の登場と広がり  眼鏡の歴史(2)

 


回は最初の老眼鏡がキリスト教の考え方ゆえに作れなかったというお話でした。その後どうやって眼鏡が作られるようになったのでしょうか。

 

眼鏡を作れるようになったのも、キリスト教の事情の変化によるものでした。13世紀以降、教皇の権威をかけた十字軍の遠征が失敗に終わり、人々の教皇に対する失望が増大していきます。その後も教皇の権威を低下させる歴史的事件が続き、教皇権は没落の一途をたどります。同時に人々に対するキリスト教的制約が解除されていくようになります。

 

 

して、いよいよ眼鏡が登場する時代に

なるのですね!

 

14世紀イタリア、ルネッサンスの時代には、自然科学研究に対するキリスト教的制約も解除され、老眼鏡が登場してくることになります。
ガラス工場の発達により眼鏡の材料であるガラスが大量に供給されるようになったこと、活版印刷の発明により書物が大量に出回り、老眼鏡の需要が増大したことで、眼鏡は15世紀に爆発的にヨーロッパに普及していきます。
ヨーロッパ人には近視は元々少ないので、当初作られた眼鏡は老眼鏡でした。

 

 

に出てみれば、眼鏡は多くの人に喜ばれる存在になったのですね。キリスト教の制約がなければ、もう少し早く誕生したのでしょうね。

 

とはいえ、その後、眼鏡が世界の他の地域に広がっていく過程では、キリスト教がその後押しをしています。異国への布教にあたって、宣教師たちは土産物として眼鏡を持参し、キリスト教とともに眼鏡は全世界へと普及していったのです。

 

(原作:医学博士  武藤政春)

最初の老眼鏡が作れなかった訳とは 1/2

  • 2016.10.21 Friday
  • 12:10

最初の老眼鏡が作れなかった訳とは  眼鏡の歴史(1)

 


トウ先生、世界最初の眼鏡っていつ誕生したのでしょう?

 

イギリス人の説によると、眼鏡を発明したのは13世紀イギリスの哲学者、ロジャー・ベーコンという人だそうですよ。その著書の中に、凸レンズを用いると物が大きく見えるということが記されています。つまり、今日でいう老眼鏡の原理ですね。

 

 

はそのロジャー・ベーコンが最初の老眼鏡を作ったということですね!

 

ところがロジャー・ベーコンは、知識を持ち合わせていながら、実際に眼鏡を作ることはしませんでした。

これは実はキリスト教的制約のためだったのです。

 

 

リスト教と眼鏡…何か不都合があったのでしょうか。

 

ロジャー・ベーコンが生きた時代は、教皇の権威が皇帝を凌ぐほど大きくなり、教会の教義が人々の生活を支配するようになっていました。
キリスト教的考え方では、すべての社会現象の中心は神であり、神の子たる人間でした。したがって地動説がかつては許されなかったことは有名ですね。
眼に関して言えば、物が見えるのは、外界からの光が目に入って見えるなどという受動的な考え方ではなく、人間が自ら光を放って見ているのだと考えられていたのです。

 

 

ら光を放って…ですか。現代の私たちにはびっくりな考え方ですね。

 

そのため、眼前に凸レンズを用いれば、外界からの光が屈折され、物が大きくよく見えるなどというロジャー・ベーコンの考え方が当時許容されるはずもありませんでした。
実際彼は、異端者として迫害され、何度か投獄の憂き目もみています。

 

 

れでは老眼鏡を作成できなかったのも当然ですね。その知識がありながら残念なことだったでしょうね…。では、いったいいつ頃から老眼鏡の作成が可能になったのでしょうか。次回はぜひ続きをお聞かせください。

 

(原作:医学博士  武藤政春)

第三の目を持つ動物、ムカシトカゲって?

  • 2016.10.12 Wednesday
  • 14:48

第三の目を持つ動物、ムカシトカゲって? 

 

ニュージーランドに第三の目を持つムカシトカゲという動物がいるのを知っていますか?

 

 

つの目を持つトカゲですか?見てみたいですね。

 

ムカシトカゲは、七千万年以上も前に地球に現れた「生きた化石」とでもいうべき動物です。ムカシトカゲの特徴は、小さい時に目を三つ持っていることです。成長するにつれて頭皮が第三の目をおおってしまうのでわかりにくいですが、一対の目のほかに頭頂部に、頭頂眼と呼ばれる目を持っています。

 

 

きた化石…その頭頂眼も、太古の名残りでしょうか。感慨深いですね。

 

この頭頂眼は、外界の明るさの移り変わりのサイクルを認識する器官だろうと考えられています。実は、私たちヒトにも頭頂眼の痕跡と考えられるものが残っているのですよ。「大泉門」というのを聞いたことがありますか?

 

 

まれたばかりの赤ちゃんの頭頂の柔らかい部分ですね。頭蓋骨の継ぎ目であり、段々と閉じていくものだったと思います。

 

大泉門、そして頭頂の真下に位置する「松果体」という器官は、頭頂眼の痕跡と思われます。松果体には、眼から明るい所にいるか暗い所にいるかの情報が伝えられるようになっていて、明暗に応じて、それぞれセロトニン、メラトニンというホルモンが分泌することにより、生体のバイオリズムを導いています。

 

 

頂眼の痕跡というだけでなく、今も大事な役割を果たしている器官なのですね。

 

ヒトの目は、「物を見る」という本来の役割と、「明暗を区別する生物時計」という頭頂眼の役割をあわせ持っています。物を見る中枢を大脳後頭葉、生物時計の中枢を松果体が担っているようです。
もし大脳後頭部の視中枢が破壊されたとしても、患者さんは盲目であることを否定します。つまり、物を見る機能が失われても、自分が明所にいるか暗所にいるかの区別はできるからなのです。

物を見る機能と、明暗を区別できる機能の両方が失われると…、大変つらいことですが、初めて患者さんも自分が盲目であることを認めるのです。

 

(原作:医学博士  武藤政春)