最高視力を持つタカの目
- 2016.12.25 Sunday
- 10:20
最高視力を持つタカの目
ムトウ先生、一番視力の優れた動物は何でしょうか。
鳥類のタカですね。タカは800メートル離れたところにいるトンボも認識できるといいます。ヒトの場合は100メートル離れるともう認識できません。つまり、タカは少なくとも8倍以上の視力があることになります。
人間の8倍以上ですか!鳥類はみな視力が優れているのですか。
鳥類は一般的に視覚や聴覚が鋭敏です。その中でもタカの視力は非常に優れています。木の実や水藻のような動かないものをエサにする鳥以上に、小動物や小鳥のような動く生き物をエサにするタカは、鋭敏な視力を持っていなければ生きていけません。
優れた視力の秘密は何ですか。
タカの目の水晶体は薄く、水晶体から眼底までの距離が長く、ヒトの目の構造に比べると、より望遠鏡に近い目をしています。つまり、遠方の物体がより拡大されて眼底に投影されるのです。さらに、タカの目の中心窩はヒトに比べてずっと大きく深くなっています。
中心窩とはどのようなものですか。
動物の目の視力の良し悪しは、網膜の機能がどの程度分化しているかによって決まります。網膜に映った像を脳に伝えるのは視神経繊維ですが、視神経繊維が集中し解析力に優れている部分を「網膜中心野」といい、より高度に機能集中されているものを「網膜中心窩」といいます。タカには、この中心窩が2つずつあります。耳側の中心窩で前方を、鼻側の中心窩で側方をはっきりと見ることが出来るのです。また、中心窩の位置が少し上寄りなので、高い位置から下方が広く見えるようになっています。
だからタカは、高い空の上から、どんな小さな獲物も見逃さないのですね。
鳥類は眼底に「クシ膜」という血管膜を持っています。クシ膜は、網膜組織の栄養を司るもので、鳥類の網膜はそれだけ旺盛な代謝が必要だからと考えられています。タカは鳥の中で最も大きいクシ膜を持っています。タカの目がどんな鳥よりも旺盛に働いているということの表れなのでしょう。
(原作:医学博士 武藤政春)
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