トカゲのしっぽ切りは目と関係がある?

  • 2017.04.25 Tuesday
  • 14:16

トカゲのしっぽ切りは目と関係がある?

 


壇を眺めていたら、トカゲを見かけましたよ。動きがすばしこいですから、視力もとても良いのでしょうね。

 

トカゲの目には中心窩(視神経繊維が集中する網膜中心野のうち、より高度に機能集中されている部分)が二つあります。トカゲはヒトと違い、ふだんは両眼視していません。左右の目が別々に動きますから、通常四か所が同時に見えていることになりますね。そしてときには、両目の耳側にあるほうの中心窩で両眼視することも可能です。

さらにトカゲの目の中心窩は深く、機能分化も進んでいますから、視力はかなり良いはずです。

 

 

づくとすばやく逃げてしまうのは、その優れた視力のためですね。

 

トカゲの目は、周囲を探索するレーダーとしては非常に優秀です。その目も左右にかなりよく動きます。ただ、実はトカゲの仲間は体が硬いのですよ。

 

 

が硬いとは意外です。視力の良さはそれを補うためのものなのですか?

 

そうですね。例えば同じ爬虫類でも、ヘビは体が柔らかく、くるっと首を回して瞬時に真後ろを向けますので、目をあまり動かす必要はありません。これに対し体の硬いトカゲは、自由に曲げにくい分だけ、周囲を観察するために目がよく動くのです。

ただし泣き所もあります。「トカゲのしっぽ切り」というのは知っていますね?

 

 

カゲが自ら尾を切断する仕組みですね。ものの例えによく使われる言い方ですが。

 

トカゲは目をよく動かしても、体の硬さのために真後ろの観察は十分に行えないのです。そのため、トカゲは後ろから敵に襲われると、自ら尾を切断します。切断された尾は、跳ね回って敵を攪乱します。しっぽ切りは、トカゲが敵から逃れるための重要な手段なのです。

 

(原作:医学博士  武藤政春)

  • 0
    • -
    • -
    • -

    情報フィルタを持つカエルの目〜カエルの目(2)〜

    • 2017.04.11 Tuesday
    • 14:28

    情報フィルタを持つカエルの目〜カエルの目(2)〜

     


    回はカエルの目が、その生活に実に都合のよい目だということをお話しいただきました。

    さらにもう一つ、際立った特徴があるということでしたが…

     

    他の動物では、網膜に映った映像は無条件に脳に伝達されます。ところが、カエルの目は、次の四つの情報だけが選択されて脳に伝えられます。

    1、自分の舌が届く範囲に入ってきた動く前凸形のものhachurui15-1カエル.jpg

    2、まっすぐな線

    3、コントラストの変化

    4、明暗の急変

     

     

    の四つに限られるというのは、どのような意味を持つのでしょうか。

     

    1は、エサの存在を知るために必要な情報であり、2〜4は、敵の襲来を感知するのに必要な情報です。

    例えば、ハエなどがかなり前方を飛んでいる場合、その情景が網膜には投影されていたとしても、脳には伝達されません。しかし、自分の舌が届く範囲に入ってきたハエの姿、ハヤブサなどが飛来して自分の周囲が暗くなる変化、これは脳に伝達されます。つまりカエルの目は、エサを捕らえるか、敵から逃げるかという生存に必要な情報のみを選択して脳に伝えています。大変効率的でムダのない目なのです。

     

     

    報を取捨選択して脳に伝える…カエルの目はすごい機能を備えているのですね。

     

    そのような合理的な目も、ときにはあだになることがあります。目の前に柳の葉がそよそよと揺れていると、カエルはエサと勘違いして思わず飛びついてしまいます。エサと間違えるだけならよいのですが、自分がエサになってしまうこともあります。

     

     

    れはどういうことですか?

     

    「蛇ににらまれた蛙」という言葉がありますが、ヘビと相対したカエルは、やがてヘビに食べられてしまいます。かつては、ヘビがカエルに催眠術をかけ、動かなくして食べるのだと考えられた時代もありました。しかし実際には、ヘビが舌をチロチロさせながら近づいてくるのを、哀れなカエルは、エサが近寄ってきたと脳に伝えてしまうからなのです。

     

    (原作:医学博士  武藤政春)

    • 0
      • -
      • -
      • -

      水陸の生活にすぐれたカエルの目〜カエルの目(1)〜

      • 2017.04.04 Tuesday
      • 15:25

      水陸の生活にすぐれたカエルの目〜カエルの目(1)〜

       


      エルは飛んでいる昆虫を捕らえることができますが、とても優れた目なのでしょうね。

       

      カエルは小さい頃はオタマジャクシとして水中に生活しますが、カエルになると主に陸上で暮らします。水中は危険を察知したときの緊急避難の場です。カエルの目はこうした生活を支えるのに都合のよい目をしています。カエルの目といえばどんなものが思い浮かびますか?

       

       

      haru_0023おたまじゃくし.jpg

      の上についたぎょろっとした目ですね。

       

      そうですね。カエルの目は頭のてっぺんについているので、敵に襲われて水中に飛び込んでも、頭を少し浮かべながら泳いでいれば、目は水面上に出ています。カエルの目は空気中では軽度近視、水中では強度遠視になっていますので、空気中の方がよく見えます。体が水中にあっても、目だけが水面上に出ているのは、カエルにとって都合がいいのです。

       

       

      が頭の上についているとなると、上の方ばかり見えるのでしょうか?

       

      そのように見えますが、実はカエルの目の構造にはそれを補う工夫がされています。視力の最も鋭敏な中心野が、視神経乳頭(視神経組織が小さな乳首上に突起しているところ)の上方に帯状に存在しています。つまり、目の下側から入ってくる光によく反応しますから、下方がよく見えるわけです。目の位置の高いカエルにとっては、ちょうど前方がよく見えるのでしょうね。

       

       

      によくできた目なのですね!

       

      カエルのまぶたは下から上に閉じるようになっていますが、これも優れた特徴です。泳ぐときにまぶたを半分閉じれば、目に水は入りにくいし、上半分が開いているので水面上を見るのにも都合が良いのです。

      さらにカエルの目は緑色と青色の違いに非常に敏感です。緑と青の紙を敷いたところにカエルを置くと、通常カエルは緑色の紙の上にいます。ところが、カエルを驚かすと、青い色に向かって飛び込みます。つまり、敵が近づいて来たら、草むらから水中に飛び込んで逃げるための非常に大切な感覚なのです。

      さらにもう一つ、カエルの目には際立った特徴があります。これはまた次回お話しいたしましょう。

       

      (原作:医学博士  武藤政春)

      • 0
        • -
        • -
        • -