三次元の目を持つカメレオン

  • 2018.02.20 Tuesday
  • 14:19

三次元の目を持つカメレオン

 

 

ットショップでカメレオンを見かけましたよ。最近は癒し系のペットとして人気があるそうですね。トカゲと同じようなものなのでしょうか。

 

カメレオンはトカゲの仲間ですが、目も体の仕組みもトカゲとは大分違いますよ。両者の生活環境が異なるからです。地面を這い回って生活するトカゲは、いわば二次元の世界に住んでいますが、木の上で生活するカメレオンは三次元の世界に生きています。
 

 

次元と三次元ですか。それぞれ体にどのような特徴があるのでしょう。

トカゲは地面を歩きやすいように五本指の手足を持っています。これに対し、カメレオンは枝をつかみやすい折りたたみ財布のような手、巻き付きやすい尾を持っています。枝につかまってあまり動かずに生活していますが、長く伸びる発達した舌を持ち、体が俊敏に動けなくても昆虫などのエサを捕らえることが出来ます。

 

 

見似ているようで、全く違う生き物なのですね。目の構造にも違いがあるのでしょうか。

 

カメレオンもトカゲも、二つの中心窩のある目を持っており、両目で四か所が見えます。視力も相当良いはずです。両者の目が異なるのは、その動き方です。トカゲの目は左右にしか動きません。二次元の世界に生きるトカゲは平面的な視界が得られれば十分です。 カメレオンは樹上という三次元世界に生きていますから、立体的な視界が必要になります。カメレオンの目は全方向に非常によく動きます。おそらく現存する動物の中では、最もよく動く目を持つ動物でしょう。

 

 

に伺ったお話では、トカゲの場合、真後ろが見えにくいので、後ろから敵に襲われたらしっぽを切って逃げるということでしたね。

 

そうですね。カメレオンの目は突き出ていてよく動きますから、真後ろまで十分観察できます。しかも左右の目が別々に動くので、片目で前方を、片目で後方を見ることもできます。 カメレオンはしっぽを切って逃げるような必要はありません。当然、カメレオンの尾は切れませんよ。

 

(原作:医学博士  武藤政春)

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    眼の無理心中

    • 2018.02.13 Tuesday
    • 17:45

    眼の無理心中

     

    トウ先生、先日『曾根崎心中』の人形浄瑠璃を観てきましたよ。
     

    好き合っていながら二人が添い遂げる場がこの世になく、来世で恋を結ぶために死を選んだお初と徳兵衛…近松門左衛門の代表的な作品ですね。「心中」というのは江戸時代に作られた言葉ですが、これは「忠」の字を逆転分解したものということを知っていますか? 当時「忠義」というのは武士階級だけに許された言葉であり概念でした。町人には人間としての誠意などないものとみなされていたのです。
    これに対し、町人にだって誠意はあるのだという心意気を示すために作られたのが「心中」です。武士の「忠義立て」に対応して、町人階級では、様々な手段でお互いの誠意を示す「心中立て」が行われていました。
    元禄時代に至り、近松門左衛門が『曾根崎心中』『心中天の網島』など一連の作品で人気を博するようになると、一般に心中というと男女の情死をさすようになったのです。

     

     

    のような成り立ちを持った言葉とは知りませんでした。時代とともに、その示すものも変遷してきたのですね。
     

    ところで、心中といえば、「眼の無理心中」とも呼べる奇妙な病気があるのです。それは眼球をざっくりと穿孔するケガをした場合に起こります。その場合、ケガをした眼が駄目になったとしても、それは理解できますね。ところが、穿孔性の眼外傷を受けた場合に、稀ではありますが、もう一方のケガをしていない方の眼にも強い炎症を起こし、結局両目が駄目になってしまうことがあります。

     

     

    うしてそのようなことが起こるのですか?片眼だけでも大変なのに、両目とはたまったものではありませんね。

     

    何故そのようなことになるのかは、未だわかっていません。この病気は交感性眼炎と呼ばれていますが、まさか眼が忠義立てをしてつき合っているわけでもないでしょう…。
    交感性眼炎というのは、穿孔性の眼外傷を受けた場合のみに起きてくる可能性があるものです。眼に無理心中されたくなければ、まず穿孔性の眼外傷を受けないように気を付けなければなりませんね。交通事故によるガラス破片、旋盤工場で飛入する鉄片などで起こす場合が多いのです。また意外に多いのが、子ども同士でハサミなどをいたずらしていて眼を突いてしまうという事例なのですよ。

     

    (原作:医学博士  武藤政春)

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      360度が見える?ウマの目

      • 2018.02.02 Friday
      • 18:15

      360度が見える?ウマの目

       

       

      日はウシの大きな目のお話を伺いましたが、ウマも大きな目をしていますね。速く走ることのできるウマの目は、とてもよく見えるのでしょうね。

       

      ウマは大きくて突き出た目をしているので、実はハエに目をなめられて寄生虫感染を起こすこともあるのですよ。ハエになめられてしまうのは困りますが、目が大きくて出目なことは、ウマにとっては大変好都合なのです。
      ウマのような草食動物は、いつも肉食獣に襲われる危険にさらされています。どこから敵が現れても探知できるように監視している必要があります。目が大きくて出目であれば、その分広い視野が得られて便利です。

       

       

      きくて出目であることの他にも、優れた特徴があるのでしょうか。
       

      まず目の位置ですね。ウマの目は顔のほぼ真横についています。ヒトのような両眼視はほとんど出来ませんが、周囲の360度がほぼ見渡せます。
      次に、ヒトの瞳孔は円形に縮瞳しますが、ウマの場合は横長に細く縮瞳します。そのため、縮瞳している時でも、横に幅広い範囲がよく見渡せます。さらには中心野が横長の帯状になっているため広い範囲をよく明視できるという訳です。

       

       

      360度が見える視界というのは、どのようなものなのか見てみたいですね。

       

      ワイドスクリーン映画の画面が、周囲360度あるかのように見えている状態ですね。どの方向から敵が現れても、すぐに探知できる便利な目です。
      また、ウマの目は調節が不必要で、実際ほとんどしていません。もしも草を食べるとき、いちいち目の調節をかけていると、その間は遠方視が不明瞭となって監視がおろそかになってしまいますね。ウマの水晶体はいびつに作られていて、敵の来襲を見張る水平方向に対しては正視に、食物の草を見る下方に対しては軽度の近視に常に設定されている目なのです。

       

       

      さにウマの生態にぴったりに作られた目ということですね!

       

      そうですね。ちなみに、360度の目は野生状態では好都合ですが、競走馬にとってはかえって邪魔になります。観客席まで目に映ってしまい、気が散ることがあるのです。そこで、神経質なウマにマスクをかぶせ、あえて前方だけが見えるようにしています。ひたすら速く走ることを要求される競走馬の宿命かもしれませんね。

       

      (原作:医学博士  武藤政春)

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