目の血管の兄弟ゲンカ 〜聖書と眼病(1)〜

  • 2018.04.23 Monday
  • 14:04

目の血管の兄弟ゲンカ 〜聖書と眼病(1)〜

 

 

トウ先生、ホテルに泊まった時、いつも奇異に思うのですが、必ず聖書が置いてあるのですね。外人客など稀にしか泊まらないのではないかと思われるところでもそうです。
 

聖書をめくってみると、結構面白い話が載っていますよ。特に旧約聖書は大昔の物語と言った色彩が強く、興味深いです。中には眼病の予防に関して、教訓となるような話もあります。

 

 

えばどのような話でしょうか?

創世記四章には、アベルとカインの話が出てきます。アベルとカインはアダムとイヴの間に生まれた兄弟です。アベルは優等生タイプのいい子、カインは腕白でも逞しく…という言葉のように育った子です。アベルは羊の放牧を行い、カインは土地を耕しました。最初の実りの秋、兄弟はともに神に捧げ物をしましたが、神はアベルの捧げ物だけを受け取り、カインの捧げ物は受け取りませんでした。つまり神のエコヒイキがあったわけですが、これを悲観したカインはアベルを殺してしまいます。
しかしその結果、アベルの恨みの血が大地を覆い、土を耕すことが出来なくなったカインは放浪の旅に出るという話です。

 

 

ベルとカインの話をテーマにしたものとして、ヘルマン・ヘッセの「デミアン」、映画では「エデンの東」などがありますね。

 

そうですね。私はこの話を読んで、網膜静脈閉塞症という眼底の病気を連想しました。網膜静脈閉塞症というのは、眼底の動脈と静脈の交叉部において、動脈が静脈を圧迫し、静脈の血液の流れを一時的に頓挫させた場合に、静脈を流れ去るべき血液が静脈からあふれ出て、いわゆる眼底出血を起こしてしまう病気です。
出血を起こした領域の網膜は、出血により毛細血管網が圧迫され、血液が流れ込まなくなるので、結局その領域の網膜は栄養が受け取れなくなってしまいます。
これは正に、カインたる動脈が、アベルたる静脈の首を絞めた所、静脈の恨みの血が大地(網膜)にあふれ、結局動脈も自らの耕すべき大地を失う様なものです。

 

 

の血管に兄弟ゲンカされて、その結果目が見えなくなってしまうのは辛いですね。

 

この病気は血圧が上昇したときに起こすことが多いですから、気をつけたいですね。次回はもう少し、聖書から連想する眼病の話を紹介しましょう。

 

(原作:医学博士  武藤政春)

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    ヘビが持つ「もう一つの目」

    • 2018.04.10 Tuesday
    • 18:13

    ヘビが持つ「もう一つの目」

     

     

    トウ先生、春には虫たちばかりでなくヘビなども活動を始めるそうですね。手足のないヘビは、その分、目などの感覚器官が優れているのでしょうか。

     

    旧約聖書では、エデンの園でイブはヘビにそそのかされ、禁断の木の実を食べてしまいました。その罰としてヘビは手足をもがれ、地を這い回って暮らすように命じられたといいます。
    手足という大切な器官を取り上げられたヘビが今日まで生き長らえてきたのは、特別な感覚を持ち合わせたためかもしれませんね。

     

     

    活圏である草むらは視界が良くありませんが、そこに適応した感覚を持つのでしょうか。

    まずヘビの目には、他の動物には見られない特徴があります。ヘビの目は透明化した皮膚が眼球をおおっています。特殊なコンタクトレンズで保護されているようなものですから、草で目を突きささずに済む大変便利なものです。また、ヘビの目の構造から考えて、相当良い視力を持っているはずです。
    しかし視界のよくない草むらでは、視力を十分生かしているとは思えません。しかもヘビの主食であるトカゲやカエルなどは、周囲に合わせて体の色を変える能力がありますからね。

     

     

    ビの優れた視力を持っていても見つけにくいというわけですね。それを補うような器官があるのでしょうか。

     

    実はヘビには「もう一つの目」があるのです。1952年のアメリカの研究で、ヘビの両目をテープで覆い、臭神経を遮断するものを吹きかけて、マウスのオリに入れてみました。すると視覚も臭覚も利かないはずのヘビが、難なくマウスを捕まえたのです。
    その後の研究で、ヘビは目と鼻の間にあるえくぼのような凹みに温度感覚の受容器官を持っていることが明らかになりました。
    ヒトの皮膚には、温かさを感じる温点が1平方センチメートルあたり3つあります。ところが、ヘビのこの凹みには15万個も集中して存在しています。この感覚器官は一対ありますから、ちょうど両目で物を見て立体感が得られるように、温度を発する物体の方向や距離、大きさから形まで、ある程度わかるようになっています。

     

     

    から視界の良くない草むらでもエサの存在を探知できるのですか。ヘビは手足を持たない代わりに、生きていくうえで目以上に頼もしい武器を与えられたという訳ですね。

     

    (原作:医学博士  武藤政春)

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